高血圧症
2012-04-10
高血圧症とは何か、高血圧症の症状・原因や高血圧症を予防・改善する食事療法などについて紹介。高血圧症にならないように生活習慣を見直しましょう!
まいにちを健康的な生活を送るために生活習慣病ガイドなど、さまざまな情報をご提供します。
高血圧症の食事療法
高血圧症の40%は、ナトリウム制限によって患者の降圧効果が認められるといわれています。これは食塩摂取量を一日5.9gにすると、収縮期血圧は10.3~4.9mmHg、拡張期血圧は1.3~2.6mmHg低下し、その割合は加齢によって降圧度が増していきます。
高齢者に対する極端な減塩は、脱水症、食欲低下、倦怠感増大など、生活の質を低下させる要因ともなるので、適度な減塩にとどめることが重要である。
調味料としては、食塩、しょうゆ、みそだけでなく、食品添加物としての「うまみ調味料(ナトリウム塩)※」についても注意が必要です。
肥満者は非肥満者に比べて、高血圧症との合併症が多く、体重が減少することによって血圧も低下することが認められています。おおよそ体重1kgの減少すると血圧1mmHg低下するといわれています。
肥満型高血圧症患者に、減塩食(ナトリウム制限食)を実施しても血圧が低下しなかったという報告もあり、一方、低カロリー食(エネルギー制限食)を実施したことで、血圧の低下が認められたという報告もあります。
そのことから、肥満型高血圧症患者には、減塩食よりもむしろ低カロリー食を優先的に実施し、それに伴って減塩につながるようにするのが効果的といえます。
また、高たんぱく食も有効とされています。高たんぱく食は尿中へのナトリウムの排泄を促進し、血圧降下が認められています。さらに高たんぱく食は、高血圧で損傷した血管を修復・強化させるのにも効果があります。十分なたんぱく質を補給することで、血管が切れる危険性を低下させます。
しかしながら、過度のたんぱく質の摂取は、腎臓に負担がかかるため、腎障害のある患者にはたんぱく質の摂取制限があるため注意が必要です。
高血圧症の患者には、その症状を分析し、減塩食(ナトリウム制限食)を中心に、低カロリー食(エネルギー制限食)、高たんぱく食が有効と説明しました。その他にも高カルシウム食、高カリウム食が有効との報告もあります。
高カルシウム食:多くの疫学的調査で、カルシウムの摂取量と血圧値および高血圧症状に負の相関があるとの調査結果が出ています。しかしながら、高血圧患者にカルシウムを投与しても、血圧の降下がはっきりと認められている訳ではありません。
高カリウム食:高血圧症患者にカリウムの摂取をしたところ、高血圧の発症を抑制する効果があったとの報告があります。高カリウム食とは一日の摂取量が3500mg以上をいいます。カリウムによる降圧作用の仕組みは、利尿作用、血管拡張作用、昇圧物質に対する血管反応の低下作用、レニン分泌抑制作用が挙がられています。
高血圧のチェックポイント(まとめ)
1) BMIが25未満となっているか。
2) タバコを吸っているか。吸っているなら禁煙をする。
3) 汁物(味噌汁、お吸い物、スープなど)一日一回にとどめているか。
4) 干物、漬物、佃煮、塩辛、たらこ、魚肉練り食品など、食塩を多く含んだ食品を好んで食べていないか。
5) うまみ調味料やインスタント食品など好んで食べていないか。
6) カリウムを多く含む野菜、果物、海草など十分に摂っているか。
7) 飽和脂肪酸(脂身の多い肉類、乳製品など)を摂りすぎていないか。
8) 普段からEPA・DHAを多く含んだ青魚(マグロ、サバ、イワシ、サンマなど)をよく食べているか。
9) 毎食たんぱく質を多く含む食品(肉、魚介、鶏卵、大豆食品)を食べているか。
10) 飲酒しすぎていないか。
11) 便秘になっていないか。
12) 温度差の激しい環境に身を置いていないか。
13) 大きなストレスを抱えていないか。
14) 十分な睡眠がとれているか。
15) 食品、調味料などの成分を正しく理解しているか。
16) うす味にしていても、食塩摂取量(一日6g未満)を守られているか。
17) どんな料理にも「しょうゆ」「ソース」「食塩」をかけていないか。
18) 血圧に影響する「塩辛い食品」血圧に影響しない「辛い食品」の区別がちゃんとなされているか。
※うまみ調味料:昆布のうまみ成分であるグルタミン酸、鰹節のうまみ成分であるイノシン酸、しいたけなどのうまみ成分であるグアニル酸などを調味料として結晶化させるために、ナトリウムと結合させています。そのため塩辛く感じなくても、体内では塩化ナトリウムと同じ成分、同じ作用をします。
高血圧症の非薬物療法
高血圧症は治療は、動脈硬化系疾患の予防にあります。日本人の死因の第2位に心疾患、第3位に脳血管障害のともに動脈硬化に起因した疾患であり、これら血圧をコントロールすることが重要です。
高血圧の治療は、すなわち狭心症や心筋梗塞などの心疾患、脳梗塞などの脳血管障害の発症を予防することにあり、これらの疾患の危険因子とともに治療内容を考慮する必要があります。そのため、治療方法も非薬物によるもの、食事制限等によるものにわかれます。
非薬物療法は、生活習慣の改善によるものであり、睡眠、運動、飲酒、喫煙、療養について管理していきます。
アルコール摂取の制限
アルコールの多飲は血圧を上昇させ、降圧剤の抵抗性原因にもなります。アルコールはエタノールに換算して、一日30mlまでに制限します。これは日本酒に換算して約1合半です。一般に日本酒1合を越えると、非飲酒者に比べて血圧が高くなり、高血圧症を抱えた患者が増えるといいます。
アルコールによる高血圧では、飲酒をやめることで即座に血圧降下が診とめられ、多くの場合、1~2週間以内で効果が現われるといわれています。
禁煙の実施
近年の研究で喫煙者と非喫煙者では、喫煙者の方が心血管疾患の発症率が高いことがわかっています。喫煙は高血圧による血管障害に発展すると推測され、心血管疾患の発症を抑えるため禁煙指導がなされています。
禁煙しても肺がんになる危険度は5~10年を経ないと低下しませんが、脳卒中や心筋梗塞は禁煙後1~2年程度で、非喫煙者と同程度の危険率まで低下します。
高血圧症の種類
高血圧症の種類
収縮期高血圧 : 収縮期高血圧とは収縮期血圧が140mmHg以上あり、拡張期血圧が90mmHg未満の場合をいいます。
白衣高血圧 : 高血圧全体の20%程度がこのタイプといわれています。一般的に非薬物的治療で経過観察することが推奨されています。診察室での血圧測定時のみ高血圧が測定される場合、診察室高血圧と呼ばれることもあります。
難治性高血圧 : 利尿剤を含めた3種類の降圧剤を最大値に近い用量で投与しても、血圧が140mmHg以上、90mHg未満にならない場合、難治性高血圧と定義されています。
食塩感受性高血圧 : 進行性の糸球体硬化(腎臓異常)と関連し、夜間高血圧など心血管系危険因子が集積している状態をいいます。高齢者では食塩感受性が増大しているので、減塩効果が著しいといわれています。
高血圧症の基礎知識
高血圧症の基礎知識
高血圧症は、生活習慣病の中でもっとも患者数の多い疾患です。その発症は、10数個の特定遺伝子が関与しているといわれています。その中でも特に重要な遺伝子が、水、ナトリウム代謝を制御しているレニン-アンジオテンシン系遺伝子※といわれています。
高血圧症の測定には、2回以上の異なる外来診察時に測定し、座位安静状態のなかで測定され、以下のいずれかを満たすと高血圧症と診断されます。
1) 収縮期血圧が常に140mmHg以上ある 2) 拡張期血圧が常に90mmHg以上ある
高血圧症の95%以上の方が、現在の診断法では単一の原因を特定できないといわれています。この原因の特定できない高血圧症を本態性高血圧といい、一方原因の判定できるものを二次性高血圧と呼んでいます。二次性高血圧の場合、その原因になっている疾患の治療を行うことで、血圧の低下が見込めます。
WHO/ISH/1999年による成人における血圧を分類すると以下のようになります。
--------------------------------- | 収縮期血圧 | 拡張期血圧 --------------------------------- 至適血圧 | <120 かつ <80 --------------------------------- 正常血圧 | <130 かつ <85 --------------------------------- 正常高値血圧 | 130~139 または 85~89 --------------------------------- Ⅰ度高血圧 | 140~159 または 90~99 --------------------------------- Ⅱ度高血圧 | 160~179 または 100~109 --------------------------------- Ⅲ度高血圧 | ≧180 または ≧110 --------------------------------- (孤立性)収縮期高血圧 | ≧140 かつ <90 ---------------------------------
※レニン-アンジオテンシン系とは腎臓でつくられるたんぱく質分解酵素の一種で血圧を保つ作用があります。交感神経の作用で血圧が上昇し、副交感神経により血圧を低下させます。