嚥下障害

2013-01-29

嚥下障害

嚥下障害とは何か、嚥下障害の症状・原因や嚥下障害を予防・改善する食事療法などについて紹介。嚥下障害にならないように生活習慣を見直しましょう!

まいにちを健康的な生活を送るために生活習慣病ガイドなど、さまざまな情報をご提供します。

ユニバーサルデザインフード

市販の「介護食」には介護食を利用する際の目安として、日本介護食品協議会において、食品を「かたさ」や「粘度」に応じて区分したマークが付けられています。

ユニバーサルデザインフードには、食べやすさの目安が日本介護食品協議会加盟企業共通マークで区分表示されています。

※ユニバーサルデザインフードの区分表示 区分1 → 容易にかめる 区分2 → 歯ぐきでつぶせる 区分3 → 舌でつぶせる 区分4 → 噛まなくてよい

 

嚥下障害に合わせた物性 嚥下障害の度合いにあった障害食の度合いを具体的にまとめると次のとおりになります。

軽度、中等度、重度障害食と対応する食品 (1) 軽度障害食 柔らかい食品 (2) 中等度口腔障害食 やわらかい半固形物で高粘度の液体 (3) 中等度咽頭障害食 ゼリー、ピューレ、やや低粘度の液体 (4) 重度障害食 軟らかいゼリー、低粘度の液体

 

各種ゲル化剤の種類と特徴

(1) ゼラチン 商品名としては、ゼライスが有名です。60℃以上の液体に直接振り入れて溶かせばよいだけの嚥下障害者用のゼラチン(商品名:ゼラチンパウダー)が市販されています。

(2) 寒天 普通の寒天は口の中でバラバラになり誤嘸しやすいので嚥下障害食用としては不適当ですが、最近はバラバラになりにくい嚥下障害食用の寒天(商品名:介護食用寒天)も市販されています。

(3) 増粘剤 「とろみ剤」とも呼ばれています。増粘剤は味付けや温度に関係なく、簡単にとろみの調整ができるものであり、原材料は加工でんぷん、増粘多糖類(海藻抽出物)などで、特長はかたくり粉のように加熱する必要がないことです。

※ゲル化剤 水溶液中に光学顕微鏡では見えないほどの粒子が溶けている状態をコロイド溶液またはソルというが、これが流動性を失いゼリー状に固まったものをゲルと呼びます。ソルをゲル状にする物質をゲル化剤と呼び、ゼラチンや寒天などがあります。

介護食とは

最近、「介護食」という言葉が使われることがありますが、学問的に定義されているわけではありません。一般に、高齢者や嚥下障害の患者の方が食べやすく、あるいは、飲み込みやすく調理された食事を「介護食」と呼んでいます。

嚥下障害患者に対する嚥下障害食は「介護食」の一部であり、「介護食=嚥下障害食」ではなく、「介護食」という言葉は「嚥下障害食」という言葉よりも広い意味を含んだ言葉であると解釈することができます。

たとえば、「はんぺん焼」や「豆腐ハンバーグ」は咀嚼しやすく、介護食ではあっても嚥下しやすい形態ではないため、嚥下障害食と呼べないということです。

これに対して、「豆腐のあんかけ」ならば介護食であると同時に嚥下障害食としても使用できます。嚥下障害食は、嚥下障害を起こしている患者が誤嚥をすることなく、円滑に食事が摂取できる形態のものであり、

別名「とろみ食」とか[ゲル食]などと呼ばれています。なお、「ソフト食」と呼ばれている食品の形態はプリン状、ムース状、かゆ状、裏ごし状など様々があり、介護食としても、あるいは嚥下障害食としても利用できるものです。

嚥下障害食への取り組み方

嚥下障害食の取り組み (1) 口腔ケア → どんなに適切な嚥下障害食でも、口腔ケアが不良で食べられないのでは、どうしようもありません。 (2) 既製品の利用 → 品質管理された嚥下障害食が手に入り、保存性があることが大切です。 (3) 専門チーム → 医師、管理栄養士、言語聴覚士、看護師などの専門家によって組織された医療チームがあること。かかり付けの病院などに相談することが大切です。

 

嚥下障害食の条件 (1) 食塊形成がしやすい。 (2) のどごしがよい。 (3) 滑らかな通過。 (4) 密度が均一である。 なお、ゼラチンは嚥下障害食に適した素材ですが、室内の温度が高いと溶けやすいので、氷や保冷剤などを入れたバットなどを利用するとよいでしょう。

 

栄養学的条件 レバー、かつお、うなぎなど、栄養価の高い食材を適宜、利用するとよいでしょう。ビタミンAの多い食品は免疫力を高め、ビタミンDの多い食品は骨を丈夫にし、ビタミンCの多い食品はコラーゲンを作ります。

 

嚥下障害食の食欲を高める

(1) 患者の好みを考慮する。 (2) 見た目(盛り付け)を工夫する。 (3) 適切な温度→温かいものは60℃以上、冷たいもの15℃以下が理想です。 (4) よい香り →香引よ、食べ物のおいしさの60%を占めるといわれ、スパイスなどによって、表面に香りを付けるなどの工夫も必要です。

嚥下障害の問題点と管理

嚥下障害の問題点と管理についてポイントを整理します。

(1) 低栄養と脱水

嚥下障害があると、食べにくい、飲み込みにくい、時間がかかるなどの症状があるために、食事をとっていても栄養素や水分の摂取不足となりやすく、容易に食べられるものばかり食べていると栄養素の偏りも出現します。

水分の必要量は、尿量プラス1,000ml程度と考えることができます。水分摂取量が少ないと、痰が濃厚になって吐き出しにくくなります。また、発熱時などでは体から失われる水分量も多くなり、水分の需要量が多くなります。

高齢者あるいは排泄に介助を必要とする人の場合は、排尿回数が多くなるのを嫌って水分摂取量を控える人が少なくありませんが、これは避けなければなりません。

(2) 誤嚥と窒息

誤嚥が原因で肺炎を起こすことを「誤嚥性肺炎」または「嚥下性肺炎」といい、命にも影響する重大な状態です。

気道(気管)に食物が入れば、健康人ではむせて激しい咳とともに外に吐き出すことができますが、嚥下障害の患者ではそれができません。「むせ」が生じないために、誤嘸にすぐ気付かれないことさえあります。むせないからといって経口摂取を進めるのはたいへん危険です。

(3) 生活の質(QOL) 食べる楽しみは[人生最後の楽しみのひとつ]といわれています。患者の生活の質(QOL)を高めるために柔軟な考え方が必要です。 ①工夫して変化のある物を楽しく食べる。 ②たくさん食べることを強制しない。 ③おいしく感じていないものを強制しない。

経管栄養を併用して、好きなもの、おいしく感じるものを安全な程度に少量食べる方法もあります。 食べるのに時間をかけ過ぎるのも問題です。疲れる、他の楽しみごとができない、外出や通院に支障が生じる、レクリエーションの障害になるといったことにもつながります。

(4) 嚥下障害食 嚥下障害食とは、嚥下障害を起こしている患者が誤嘸をすることなく、円滑に食事が摂取できる形態のもので、プリンやゼリー、あるいは豆腐のような形態またはポタージュやくず湯のようになった食事です。軽症の場合には、いも類の含め煮、グラタン、クリームコロッケ、コンポート、ふろふき大根、リゾットなども食べられます。ねぎとろ、やまいも、テリーヌ、温泉卵、卵豆腐なども利用できます。

嚥下障害の基礎知識と食事

嚥下とは、食べ物や飲み物を飲み込むことによって、狭義には口に入ったものが胃に到達するまでの経緯を指します。しかし、嚥下の仕組みがわかるように、実際には、ものが口から入る前から「嚥下」が始まっています。 嚥下障害とは、食べ物や飲み物をうまく飲み込むことができなくなった状態です。加齢とともに生じやすく、高齢者の食事を考えるうえにおいて、非常に大事な概念です。

嚥下通常、次のような5段階で行われています。

先行期→食物を目で見て、口に入るまで。 準備期→口腔への取り込みから食塊の形成まで。 口腔期→食塊をのどに送り込む時期。 咽頭期→「ごっくん」と飲み込む瞬間 食道期→食道に入った食物が食道の蠕動(ぜんどう)運動と重力の作用で胃へ送り込まれる。

嚥下障害は原因により2種類に分類することができます。

(1) 機能的嚥下障害 中枢神経障害(脳血管障害、パーキンソン病、アルツハイマー病、脳炎、多発性硬化症、腫瘍、頭部外傷など)、末梢神経障害(多発性脳神経炎、腫瘍、外傷など)、神経・筋接部疾患、筋疾患(筋無力症、筋ジストロフィー症、多発性筋炎など)、心因性・ヒスツト、薬剤性など。

(2) 構造的嚥下障害 腫瘍、炎症性疾患(扁桃炎、扁桃周囲腫瘍、咽頭蓋炎)、食道炎、悪性腫瘍による狭窄、潰瘍、口腔・咽頭の外的圧迫、食道への外的圧迫。

※パーキンソン病 パーキンソンが報告した疾患で、筋力の緊張が高まり、安静期に指が震えて、物をつかむような動きや筋肉が硬くなり自発的な動きがなくなるなどの症状がともなうう神経難病のひとつ。 精神症状として、うつ病を合併しやすく、幻覚・妄想・認知症状が出やすい。

※筋無力症 筋肉の神経障害により、筋力が低下して筋肉が疲労しやすくなる。20代の女性に多く、感染症、精神的興奮が誘因となる。運動の反復により、筋力が弱まり、休息すると回復する。

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