疾病構造

2012-05-10

疾病構造

疾病構造とは何か、疾病にならない予防・改善する食事療法などについて紹介。病気にならないように生活習慣を見直しましょう!

まいにちを健康的な生活を送るために生活習慣病ガイドなど、さまざまな情報をご提供します。

ライフステージと健康

わが国では平均寿命が延びたおかけで、さまざまな健康問題がでてきました。一昔前は、「人生50年」といわれていました。しかし第二次世界大戦後、急速に栄養状態か改善され、平均寿命は世界で1、2位を争うまでになりました。以下、健康を成人期(20~39歳)、壮年期(40~64歳)、老年期(65歳以上)の3つに区分して説明します。

成人期(20~39歳)の健康 人生の中で肉体的、精神的にピークを迎えて疾患になりにくい時期でもあります。この時期での健康問題として、男性では生活習慣の乱れから起こる肥満の増加、女性では反対にやせ(低体重)が問題になります。

※1日あたりの歩数の減少 年々減少をたどっている。平成15年は男性7,575歩、女性6,821歩であったが,平成20年は男性7,011歩,女性5,945歩となっています。

男性:生活習慣の乱れによる肥満者の増加 2007年の国民健康・栄養調査では、20~39歳の肥満者の割合が20年前と比較して、約1.5倍増えています。エネルギー摂取量は年々減少していますが、肥満者の割合が増加する原因として、日常生活の身体活動量の減少、1日あたりの歩数の減少、食生活の乱れなどがあげられます。仕事が生活に占める割合が増加し、運動や食生活に配慮しにくい環境も影響しています。

女性:やせの割合の増加 20~39歳のやせの割合は20年前と比べて約1.4倍に増加しています。やせの女性が増加することで起こる問題として、低体重児の出生率増加と将来(更年期以降)の鉄欠乏性貧血、骨粗鬆症の増加です。原因は、朝食を欠食する、栄養素の悪いバランス食事、ダイエットのための小食などがあります。

壮年期(40~64歳)の健康 壮年期から年々老化のスピードが加速していきますが、個人差が大きく、毎日の生活習慣が壮年期以降の健康に大きく影響していきます。男女ともに共通していることは、肥満者増加による生活習慣病の発症であり、女性は更年期障害が問題になってきます。

(1) 肥満者増加による生活習慣病の増加 成人期から抱えている生活習慣の乱れの蓄積が肥満を生み、高血圧症、脂質異常症、糖尿病などの生活習慣病発症という形で現れます。加齢とともに消費エネルギーが減っているのにもかかわらず、成人期と同じ食生活をし、身体活動を増やさなければ、内臓脂肪が蓄積して、肥満から生活習慣病発症へと向かいます。

(2) 女性;更年期障害 女性の平均閉経は50歳前後で、閉経を境に前後通じて5年間に起こるさまざまな体調の不良により、日常生活に支障が出るほどの症状を更年期障害と呼んでいます。ほてり、発汗、疲労感、うつ状態など全身に症状が出ます。原因はエストロゲン(女性ホルモン)の分泌低下によるもので、ホルモンバランスが崩れて、神経の働きが強くなったり、弱くなったりして起きます。また、エストロゲンの分泌低下と関連して、生活習慣病が発症しやすい時期でもあります。

 

老年期(65歳以上)の健康 いくつになっても、健康を維持したい願望は誰もが持っています。しかし、65歳以降、老化のスピードは増すばかりです。健康を維持するためには、食事をきちんと摂取することが大切ですが、食事摂取にも老化の影響も出て、食欲が低下する、食事摂取量が少なくなる、栄養素が偏るなどが原因で、栄養失調になる可能性も高くなります。

(1) 口腔の変化 唾液量が減少する、咀しゃく筋力が低下する。

(2) 味覚の変化 味覚の感じ方が鈍くなる(特に塩分と甘味)

(3) 歯数の減少 残っている歯数と咀嚼能力とは相関する。

(4) 嚥下運動機能の低下 誤嚥しやすくなり、水分や食べ物で気管に入ってむせてしまう。

(5) 消化吸収機能の低下 胃~小腸~大腸での消化吸収機能が低下し、栄養障害を引き起こす可能性がある。

※成人期からの食事・運動・飲酒・喫煙などの生活習慣と老年期の生活習慣病の発症 老年期の健康に大きな影響を及ぼし、老化の影響がそれに拍車をかけて、抱えている生活習慣病を重症化させる。健康状態の悪化が、体力や抵抗力を弱め、感染症にかかりやすくなる。老年期では、適正体重の維持が健康のバロメーターになり、それには日頃の食生活を中心に身体活動量の維持、節酒などが重要なポイントとなります。

生活の変化と疾病

現代のわが国において、大きなターニングポイントは、1950年代の高度経済成長以降であるといってもよいでしょう。1956年の経済白書に書かれた「もはや戦後ではない」という言葉は、わが国を覆いつくし、所得倍増政策の名のもとに効率化と欧米化か急速に進みました。

その象徴的な出来事が「三種の神器(白黒テレビ、洗濯機、冷蔵庫)」の普及と、東京オリンピック、東海道新幹線の開通です。下水道の整備にともなう水洗トイレの普及と相次ぐ抗生物質の発見によって、衛生害虫による感染症は格段に滅少し、欧米型の食事やファーストフードによって脂肪の摂取量が大幅に増加した結果、かつては「成人病」と呼ばれていた生活習慣病は確実に増加しました。 このように私たちを取り巻く環境の変化が、疾病の種類と密接にかかわっていることを認識しなければなりません。

※疾病構造の変化 昔→栄養素不足→免疫力低下→感染症の増加 今→栄養素過剰→肥症・脂質異常などの増加→生活習慣病の増加

※ファストフード 注文してすぐ食べられることから「速い」という意味のファストの名称がある。ケンタッキーフライドチキンが日本万国博覧会(大阪万博)の会場に実験店を出店したのが1970年。 マクドナルドが銀座に1号店をオープンさせたのが1971年。そして、年を同じくして、日清食品からカップヌードルが発売された。この頃からわが国の食生活は急激な変貌を遂げていく。

疾病構造の変化

感染症の時代から生活習慣病の時代へ

以前わが国は、衛生状態が悪く栄養状態もよくなかったため、赤痢や結核などの感染症によって、命を落とす人が多くいました。感染症の原因は細菌やウイルスなどの病原体であり、疾病の原因が外部にあります。これに免疫力の低下などが重なって発症します。このため、消毒薬などで衛生状態をよくし、細菌やウイルスなどの病原微生物を殺す抗生物質や抗ウイルス剤などの薬剤の開発により、感染症は激減しました。

ところが現代では、食べ過ぎ、アルコール飲料の飲み過ぎ、運動不足などによって肥満、脂質異常症などが原因となって起こる心臓病、脳卒中、糖尿病などの生活習慣病が増加しています。日本人の死因の第1位を占めるがんてさえも、30%以上は食生活そのものが原因であることが疫学的に明らかとなっています。

現在問題となっている生活習慣病は、生活習慣という常日頃の自分自身の悪い生活態度に問題があり、これが発症の原因となっているわけですから、生活習慣を改めない限りは治療効果を上げることは難しいのです。そして、慢性的に経過する疾患が多いため、病気と一生上手につきあっていかなければなりません。これが感染症などの急性疾患との人との大きな違いです。

つまり、昔のバクテリアが原因の「治る病気」から、自分自身の生活習慣と遺伝子などが原因の「治らない病気」へと疾病構造が変化してきたのです。生活習慣病は、自らの健康の良い状態を保ちつつ、悪化させないような生活態度が、患者自身に求められるのです。

※感染症 病原バクテリアの感染が原因となって発症する病気の総称で、伝染病と呼ばれることもある。しかし、ヒトには伝染しない感染症も存在する。

※疫学 地域や職域などの多数の集団を対象として、疾病や事故についてその原因や発生条件を統計学的に明らかにする学問。食べものと疾病との関係などは、疫学的に明らかとなったものが多い。

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